2004年9月の発行です 本書の表紙の帯には「120年の歴史が積み上げてきた豊穣な小説世界を語る」というように、活字の大きさもこのような変化を持たせて書かれています。
「二葉亭四迷の「浮雲」から始まった近代小説のテーマとされてきた「私」「家」「青春」などの問題はほぼ書き尽くされ、いま小説は終焉を迎えようとしている。・・・・・・」
これこそが、本書の主要テーマです。また、本書の「はじめに」とある序文的なところの最後に、「小説はつねに歴史とともに歩いてきた。百二十年のあいだ小説を生み出してきた背景には、明治維新以来の日本の歴史があった。今、その歴史が跡形もなく崩れている。これまでの歴史の上に立つ小説はもう書いてはいけない。」とあり、些か真意を把握しにくい終りかたをされていますが、フランシス・フクヤマの『歴史の終焉』にでもからめているのでしょうか?ところが、この本を最後までシッカリと読み通せば、おっしゃている意味が十分にわかります!
なお、川西氏には『昭和文学史』(全3巻、 講談社)という大部の御著作があり、「昭和文学の時々刻々をドキュメンタリー風に辿る記念碑的傑作」と帯にあるのが上巻、「興味尽きない出来事に彩られた作家達のドラマ“読む”文学史、愈愈佳境」とあるのが中巻、「あの作家この作品の誕生秘話、文学者の営為はこうして時代の精神を映し出す」とあるのが下巻です。2001年7月から11月にかけて発売された本書は、村田自身はまだ読みかけながら、実に圧巻!故伊藤整氏の『日本文壇史』の昭和版といった趣きです。