アトピー性皮膚炎の漢方治療  東洋学術出版社

漢方医学関連書評集 >     1996年5月発行 定価3,570円

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◆エキス剤の運用 肺脾病としてのアトピー性皮膚炎…村田 恭介」 

とある!

               アトピー性皮膚炎の漢方治療


 現在も販売されています。各書店に注文されるか、「漢方薬専門のリンク」の東洋学術出版社のところをクリックしていただければ、注文のコーナーがありますので、出版社に直接注文することも出来ます。

 本書は前回に続いて同じく「アトピー性皮膚炎」ですが、今回は漢方専門書籍といっても、全員が日本漢方ではなく、主として中国漢方(中医学)の専門家三十名以上による全24編55症例が掲載されています。

 本書には村田恭介自身も『エキス剤の運用 肺脾病としてのアトピー性皮膚炎』と題した論文で参加しています。肺脾病論の考察とともに4症例を提示しています。
 したがって、ここではいかにも拙論の紹介に終始しそうですが、さにあらず。


 前回の竹原和彦氏の西洋医学治療における「ステロイド剤」の正しい使用方法を受けて、中国医学の専門医としての立場から、このステロイド剤の問題を執筆された京都の高雄病院の医師・江部康二氏の論説『アトピーとステロイド―<リバウンド現象>と<ステロイド中止後の離脱皮膚炎>の違い』と題された内容の一部と対比させたいのです。

 本書自体はまったくの専門家向けですが、江部氏の外用ステロイド剤の使用方法についての考察に関しては、竹原氏と共通するところも多く、それゆえに専門化のみならず、アトピー性皮膚炎に悩まれる多くの患者さんたちにも、大いに参考価値があると思われるのです。
 それゆえ、村田漢方堂薬局でもアトピー性皮膚炎の患者さんたちには、必ず江部先生の本論説をご紹介して、正しい外用ステロイド剤の使用方法をアドバイスしています。

 次に、江部氏の考察『アトピーとステロイド』から、村田漢方堂薬局で最も参考にさせていただいている部分を抜き出してみます。


ステロイドは、漫然と長期間塗り続ければ副作用が心配であるが、アトピー悪化時には塗って速やかにコントロールしたほうがよい時もある。ステロイドに罪はなく使い方が問題といえる。事実、きめ細かく使用すれば副作用は激減する。

※使うからには時間をかけて詳しく役割・使用法を説明することが必要である。またステロイドは対症療法であり治しているわけではないので、必ず漢方・食養・心理療法など根治療法を併用することが肝要である。

※「すべての治療に意味があり、すべての治療方法に限界がある」というのが、私の基本的立場である。漢方においても西洋医学においても、方法論は異なるが幾多の先人の努力により、できるだけ治療効果が出やすく限界を減らすような体系・理論が形成されている。それでも限界があるわけだが、民間療法にはこのような努力・体系・理論はない。しがたって当然限界の多い治療法だということになる。しかし漢方薬が有効であるといっても、過信してステロイドを一気に中止してリバウンドを起こすようなことは厳に慎まなくてはならない。それでは民間療法と同じレベルである。

※私の外来で初診時にステロイドを使用していた人の約半数は数ヶ月〜1・2年でリバウンドを起こすことなく徐々にステロイドを離脱している。約4割強は徐々に減らしていって、ごく部分的に週1〜2回ステロイドを塗る程度ですむようになる。この程度の塗り方であれば、副作用の心配はほとんどない。
 
※顔は塗らなくてすむようになる人が過半数であるが、塗る場合はもちろん<おだやか>か<弱い>ランクのステロイドにしてもらう。手足や身体には<強い>ランクのステロイドも使う。<最強>や<やや強い>ランクのステロイドをつかっていた人でも殆ど<強い>以下ですむようになる。

※漢方・養生など根治療法を試み、スキンケアなど生活指導も行い、ステロイド及びステロイド以外の外用薬も詳しく役割・使い方を説明する。きめ細かく用いることでステロイドの効果も出やすくなるし、副作用は激減する。
 それでも遺憾ながら、約数パーセントはなかなかステロイドを減らせずに苦労している。アトピーの奥はなかなか深いようである。



 以上、特に参考価値の高い個所を赤色文字とさせていただきましたが、それにしても高雄病院で扱われる患者さんたちは、相当な重症者ばかりのようです。