病院と漢方相談薬局との関係はどのようにあるべきか

漢方相談薬局と病院はどのような関係か?村田漢方堂薬局を例に考察

 漢方専門で開業されるのは、薬局ばかりとは限らず、昨今はお医者さんの診療所や、大きな病院でも漢方専門科的な部門が随分増えたと聞きますが、本州最西端の下関でも、開業医さんで一〜二名おられるようにお聞きします。
 そのような漢方専門の病院・医院との関係の問題ではなく、漢方薬局、漢方薬専門を標榜する我々のような漢方相談薬局としての立場と、一般病院との関係を敢えて述べてみたいと思います。

 意外にというか、案に相違せずというか、この話題は皆があまり触れたくないし、また触れられたくない部分のようですので、一度誰かが書いておくべきだと思いました。それには一言居士の村田が適任であろうかと思いましたので、理想論も多少含めながら、村田漢方堂薬局の例を中心に述べてみたいと思います。

 漢方相談に初めて来られる人々は、大きく分けて次の3種類に分かれます。

 @病院に行くのが面倒なため。
 A病院治療だけでは回復しないため。
 B病院の薬で副作用が出て続けられないため。


 以上のうちAが最も多いのですが、病院との関係を中心に述べて参ります。


@病院に行くのが面倒な人々

漢方相談の村田漢方堂薬局は病院ではありません。

 病院に行くのが面倒なお気持は良くわかります。私自身が歯科治療が大嫌いで、ボロボロの歯を自分で修理?しながら歯の治療にもう、8年以上も行っていません!

 ですから、人のことをとやかく言う資格はないのですが、本業の漢方相談薬局経営薬剤師の業務の上では、いっぺんに発言する資格が与えられます。

 初めて見えられる人では、明らかな風邪以外は、「漢方相談の実際」でも述べました通り、まず病院や診療所に行くことをお勧めして諸検査および標準治療を受けてもらいます。

 それらを受けて、診断か下り、諸治療を行っても治らなければ、あらためてご訪問下さいと説得です。
 薬局は病院ではないのです。適切な漢方薬のアドバイスは出来ても、診断は出来ません。当然のことです。診断するのは病院です。

 後にも述べますように、もしも病院でもらった薬で重大な副作用が出現した場合の相談では、薬剤師の任務として、このときは大いに発言力を発揮しますが、「重大な疾患が隠れていたらどうするのですか」と多少の大袈裟な表現も加えて病院に行くことを説得します。

 緊急を要する場合に、一時的な応急薬の牛黄や麝香類をお渡しすることはあっても、病院での検査と治療が大優先です。

 ただし、昨今,軽医療が重要視され、市井の薬局の重要な任務となっているようですが、金太郎飴のように、どこの薬局も同じようである必要はないと信じています。

 漢方薬を専門とする薬剤師2名だけの漢方薬局です。あれもこれもと欲張っていては、圧倒的多数の難病・慢性病で長く頼って来られておられる皆様との漢方相談の時間が奪われてしまいます。


A病院治療では不充分と感じられて来られるケース

圧倒的に多いケースで、村田漢方堂薬局の主な相談業務です!

 圧倒的に多いケースで、重大な難病から慢性風邪症候群的な方たちまで、あらゆる分野の様々な病名を持参されます。

 これらの方々こそ、病院との協調や連携を必要とすることが多く、以前ではお医者さんの漢方薬に対する理解が無かったために、けんもほろろに否定されていましたが、昨今では理解して下さる先生方が相当に増え、お医者さんに隠れて漢方薬を利用される人も随分減ってきました。

 「漢方薬局と現代社会」の項でも書きましたように、検査は病院、薬は村田漢方堂薬局で、という方が随分多いのです。それを許可?して下さるというより、認めてくださるお医者さんが多いことは、まったく以前に比べると隔世の感があります。

 たとえば、こんなケースだって珍しくありません。ある病状が続いて一般医院に行くも、検査データーにはかなり異常値があるものの、原因不明で対症療法薬が出るだけで、結局大きな病院に紹介され、ようやく何とかなると思ったところがそこでも原因が不明なまま、困り果てて村田漢方堂薬局に相談に来られた人に、もう一度行って「・・・」の可能性が高いから、そう言って再度検査してもらって下さいということで再診を願って行ったところ、その必要はないとやってくれなかったと言います。
 
 そこで、弁証論治による「中医漢方薬学」療法の配合をアドバイスし、同時に予測される疾患名のヒントを再度強調、その筋の専門医さんをお教えしました。

 ところが、当方の漢方薬で半分は楽になるものだから、専門医さんの大病院に行くのが先延ばしになりかけていましたので、無理に説得して検査してもらったところ予測どおりの病名!

 (その病名を推測できた村田漢方堂薬局のヒゲ薬剤師は、そんなことは、あまりにも再々だから、それほど自慢するには及びません。と言って、やっぱり自慢しているのかなあ〜。)

 ともあれ、本当の某科における「専門医」は診断の腕が違います。なかなか分かりにくい病気の場合は、必ず専門医の先生に診察・診断を仰ぐ必要があります。

 このようなケースは、毎年、5から10人くらいは確実におられます。

 その後は、必要最小限の病院の治療薬とともに村田漢方堂薬局からお出しする適切な漢方製剤の組み合わせで比較的順調に経過している、というこのようなパターンが結構あります。

 いずれも名医といわれるほどの先生方は人物もしっかりされておられ、村田漢方堂薬局の漢方薬の効力を大いに認めて下さるわけです。


B病院の薬で副作用が出て続けられない人

主治医に言って薬を変えてもらうべき、何を遠慮されるのでしょうか?

 病院の薬の副作用に驚いて、新薬不信に陥り、漢方薬も同じクスリだからと、不安がる人もおられますが、病院の薬の副作用に降参した人々は漢方薬に頼ろうとされるケースが多いようです。

 先述の二箇所の病院で病名不明であった人も、対症療法で出されたお薬で、ひどい胃痛が継続してこりごりされて三軒目の専門医への訪問が遅れたのも、病院のお薬に対する不安が大きいのが原因の一つでもありました。

 漢方専門の相談薬局という立場上、病院から出された薬の副作用問題のご相談もかなり多いのは同業の方々もきっと同じだと思います。
 村田漢方堂薬局では、多くの場合は「主治医に話して、お薬を変えてもらったらどうですか」と勧めます。
 しかしながら、しばしば、お前は漢方薬を出したくないのか、というような怪訝な顔で見られます。薬局では言えても、医師には言えないのが、何とも不思議です。
 何を遠慮されるのでしょうか?医師へ苦情が言えない、というより言う勇気のないご自身への歯がゆいジレンマから来る鬱憤からか、当方のような漢方専門の薬局に来られて、八つ当たりされる方も多々あるわけです。

 当然、こちらはほどほどには、多少強めにご注意申し上げます。「それを病院の医師に言われたらどうなのですか!?」

 ともあれ、中にはひどいお薬の投与内容に呆れて、即刻全部中止して病院を変えなさいと、かなり命令口調で言わざるを得ない場合もあります。

 当方は薬剤師、医薬品の専門家です。あまりにひどい投薬内容では、ご注意する資格があるわけです。
 アメリカなどでは患者さんに投薬内容を薬剤師が決めて、医師が最終認可か結論を出すようなことを聞いています。
 きっと薬の専門家である薬剤師の方が副作用情報および薬理作用の知識が優れているからでしょう。

 ところが、日本では薬剤師の知識が劣るのか、あるいは利害関係がからんで薬剤師が遠慮されているのか、実体は不明ですが、村田漢方堂薬局のヒゲ薬剤師のように、患者さん中心の率直なアドバイスをする先生方が、比較的少ないように感じています。

 実際、日本国内ではひどい投薬内容にシバシバ遭遇して驚いています。その場合は、病院を変えるようにアドバイスです。
 他にも信頼できる病院や診療所は沢山あるのです。
 32年も漢方相談の仕事をしていますと、おおよその信頼できるお医者さんは、かなり把握できています。主治医を変えるようにアドバイスせざるを得ないケースがしばしばです。

 とは言え、わざわざ漢方相談にみえるくらいだから、案の定「もう病院の薬はこりごりだから漢方薬を出してもらえないだろうか」と食い下がられることも多く、その場合でも定期的な諸検査の必要性を説き、また必要に応じて病院の投薬も受けるべきだからと、信頼の置ける病院や専門医のところへ行かれるべきことを説得するわけです。

 このように、漢方相談では常に病院との関係が密接に関わってくる仕事なのです。
 当然のことではありますが。


病院治療と漢方薬を上手に両立させている多くの患者さんたち

このケースが最も理想的であり、そういう患者さんが最も多いのです!

 どのようであれ、最終的に村田漢方堂薬局に通われている方々では、病院治療と漢方薬をうまく両立させておられる方も多いのです。

 中には病院のお薬をすべて中止して、病が快方に向かわれたひどいケースもあることも事実です。
 実際には、この病院のお薬の副作用問題は、毎年嫌になるほど問題を持ち込まれますので、前項で書いておくべきことが、この項目にまではみ出して、ついつい書いてしまうほどです。
 そのような投薬をされる先生ほど、漢方薬を否定されるのですから、まったくかないません。

 でも、多くの病院の先生方は、とりわけ難病系統の患者さん達には、漢方薬の使用を寛大にみてくれますので、さいわいです。
 ですから、村田漢方堂薬局では、なるべく主治医に漢方薬の使用を報告するように勧めています。
 いい加減な買い方をしているのではなく、きちんと相談して買っている証拠として「村田漢方堂薬局」で買っていると言うようにもお勧めしているわけです。
 
理想的には病院との協調と連携なのですから。

 当然、病院から出されるお薬も、本当に必要なものは必ず併用するように強く念押ししているわけです。
 ただし、病気の内容によっては、経過観察でお薬が出ないケースもあり、その場合こそ漢方薬の独擅場(どくせんじょう)というわけです。

注記:蛇足ながら、独壇場(どくだんじょう)というのは誤りで、正しくは上記のように独擅場(どくせんじょう)。

●「漢方相談の実際」「漢方薬局と現代社会」「漢方と漢方薬の御案内」も併せてお読みくだされば、さいわいです。

 ブログ「漢方と漢方薬の質疑応答集と村田漢方堂薬局の近況報告」は現在進行形ですが、「漢方薬・漢方専門薬局薬剤師の憂鬱」でも深刻な問題を取り扱っています。