副題として「エキス剤による中医診療」とあります。
著者は、日本の中医学派では、数々の中医学関係の大変有益な専門書を編著や翻訳出版する研究団体として有名な「神戸中医学研究会」の森雄材氏です。
本書の出版は、1998年5月で、価格8,190円で、現在も販売されているようです。
中医学の入門書としては最高ではないかと思います。村田漢方堂薬局では、漢方薬をお出しするときの便利な説明・解説書として、大いに利用させてもらっています。最低限必要な基礎理論もしっかり解説してあり、方剤学の解説書としては、詳細で理解しやすく、中医学派による口訣集的な役割を果たすものですから、日本漢方にあきたらず、中医学派に転向を考える向きには、うってつけかもしれません。
森氏は臨床医ですから、しっかりとした基礎理論の知識と臨床実践との結合による考察から生まれた、実践的な方剤学書となっているわけです。
ところで、チョット本題から離れて余談がメインになりそうでやや気が引けますが、私がここ十年近く重宝している方剤学関係の書籍では、1993年に中国中医薬出版社から発刊された『中医名方臨証秘用』(方文賢主編)です。
もちろん中国語原書で、臨床実践に直結した解説に優れています。
ちなみに、私が以前、葛根湯加減方が適応する「めまい」が日本人には比較的多いことを発見し、すごい発見のように有頂天になっていたら、ちゃんとこの本には書かれていて、ガックリ。
やはり中国は広い!っと感嘆していたが・・・・・・ところがところが!!!
後ほどよく調べると、この書籍自体がかなり日本の古方派漢方の文献を広く渉猟して引用していることが判明!
ということは、この葛根湯による「めまい」治療の引用の出自は日本古方派かも知れないのである。ここでも「異病同治」を特徴とする、日本漢方の優れた点が、再発見されるような気がしないでもない訳である。