1998年10月発行で定価900円。
 副題として「ステロイド外用薬の誤解を解く」とあるのが、特に注意を引きます。
 著者の竹原和彦氏は、金沢大学医学部の皮膚科教授です。日本皮膚科学会ノ「アトピー性皮膚炎・不適切治療健康被害実態調査委員会」の委員長も務められておられます。
 西洋医学治療における皮膚科のプロが書かれた大変な良書です!日本国中の皮膚科の先生が、本書の内容の通りを実行される日が来たら、我々漢方の専門家は、アトピー性皮膚炎で活躍しなければならない機会は激減するはずだったのですが、2004月11月28日現在でも、活躍する場は一向に減りそうもないのが不思議です。

 同じ竹原先生の本で、もっと新しい『こうして治すアトピー』と題された、2002年1月に岩波書店から発行された750円のアクティブ新書をご紹介しても良かったのですが、内容的には同工異曲であり、また本書の副題に「ステロイド外用薬の誤解を解く」とあるのが実に言い得て妙、的確に主要テーマを表現していると思ったからです。
 ただし、岩波版の方には、本書が発行されて以後に作られた日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎治療ガイドラインや、当時の厚生省研究班による治療ガイドラインについても取り上げられています。

 要点をかいつまんで述べますと、正しいスキンケアーとともに、外用ステロイドの正しい使用方法によって、充分に軽快させることができ、内服ステロイドを使う機会はあり得ない。また、重要な指摘として、世にはびこる「アトピービジネス」に対する警告を発していることです。
 珍奇な治療方法によって悪化したたくさんの事例を取り上げておられますが、一部には漢方薬治療に対する批判もあります。当然、漢方薬は弁証論治の原則にもとづいた適切な処方がなされなければ無効であるどころか、たまには悪化することだってあり得るわけです。

 ともあれ、このような良書は、アトピー性皮膚炎に悩まれる皆さんはもとより、医師・薬剤師も、一般向けだからといってないがしろにせず、一度は読まれておくべき必読書であると思われるのです。

 また、本書で指導されるステロイド軟膏類の使用方法は、
書評「アトピー性皮膚炎の漢方治療」で取上げた江部先生のご指導と多くの点で共通していることは、とても注目するに値します!

 ところで、我が村田漢方堂薬局では、多くのアトピー性皮膚炎の成人の男女で、西洋医学治療で悪化した人たちが様々なところから紹介されて来られ、かなりの成果を得ており、その村田漢方堂薬局のアレルギー対策としての方法が、漢方医薬新聞や東京書籍から出版された書籍、薬局新聞社の書籍、月刊健康雑誌『安心』の別冊附録などでも紹介されていますが、子供さんのご相談に乗ることは少ないのです。
 理由は、子供さんたちこそは西洋医学治療で充分な治療効果が得られるものと考えるからです。
(少しだけ本音を言わせて貰えば、成人後のアトピー性皮膚炎で漢方薬を求められる方は、総じて行く場を失っており、村田漢方堂薬局の漢方薬が最後の手段くらいに覚悟が出来ているので、じっくりと腰を落ち着けて、冷静に頑張ってもらえることが多いので、かなりな重症でもいい結果が得られやすい。子供さんの場合は、この情報過多の時代、ご両親にまだまだ迷いが多く腰を落ち着けた御相談にはなりにくく、当方のアドバイスを素直に受け入れてもらえないことが多いから、というのが、真実かも知れない。)

 ともあれ、アトピーに悩まれる人は、上記二冊のうち、どちらでも構いませんから読んでみて、本書の内容に近い治療方法をとられる西洋医学の皮膚科医師を見つけ、まずはしばらく通ってみることをおすすめします。