『「がんビジネス」の実態に迫る』 というのが副題になっています。
2004年3月発行で、定価は本体1,600円+税。
本書の題名は些か紛らわしく、いかにも「免疫学」そのものを否定しているかのように勘違いされる方がおられるかもしれませんが、とんでもありません。
副題にあるように、今はやりのいわゆる「がんビジネス」の検証本なのであって、免疫学そのものの重要性を否定しているのでもなければ、ましてや免疫学自体を批判している訳でも決してありませんから、誤解しないように願います。
本書の副題の下の帯には、「アガリクス、リンパ球療法では、がんに勝てない!」とあって、これがかなり目立ちます。これに続いて「肝がん切除後の患者にアガリクスの再発予防効果はなかった」とあり、これだけの説明でも、本書のすべてを言い表しています。
本書と同様な記事が、2004年の今年、新潮社発行の月刊誌「新潮45」の6月号に「『奇蹟のきキノコ』アガリクスの正体」という記事を、鳥集徹氏が書いています。
「癌に効いた!」「医師に見放されたのに治った!」……美辞麗句に彩られ、三百五十億円市場にまで成長したアガリクスビジネスの呆れた実態。
との要約が付いていますので、本書とは同工異曲というよりも、ほとんどソックリです。
以上に記しただけでも、十分お分かりのように、アガリクスとリンパ球療法の実態を暴いた批判本です。内容を読まれれば、ひどい実態が暴かれているわけですので、これ以上の説明は不要です。
ところで、以前この「ヒゲ薬剤師による 漢方医学関連書評集」欄で取り上げた、現在開業医であられる清水宏幸氏著『新しい医療革命』では、副題が「西洋医学と中国医学の結合」とありますように、その第四章が「悪性腫瘍の中薬を用いた新しい医療」とあって、西洋医学と中医薬学の併用により、かなりな成果を挙げておられます。
いわゆる西洋医学と東洋医学の結合です。
このことを中国では「中西医結合」、あるいは内容によっては「中西医合作」といいますが、かなり検証にたえ得る内容ではないかと思われますが、どうでしょう。
事実、中国では抗癌漢方薬、正確には「抗癌中草薬・・・・・」あるいは「抗癌中薬・・・・・」と名の付く書籍類が膨大と言っていいほど、数多あります。
また、抗腫瘍漢方薬、正確には「抗腫瘤中薬・・・・・」や「中医腫瘤・・・・・」など、枚挙に暇がありません。
それほど、中国国内では中国漢方における中医薬学による、癌・腫瘍類の治療実績と文献が、皆さんの想像以上に豊富なわけです。
このように、西洋医学・薬学、あるいは中国医学・薬学のように、正当かつ正統な医学・薬学とは完全に埒外にある「アガリクス」などの健康食品には、十分な注意を払う必要があるように思われます。
追記:平成18年2月中旬、某大手メーカー子会社が製造するアガリクスに発がん性あり、というトンデモナイ事態が生じた。
今後の推移を見守る必要がある。