なぜ中国医学は難病に効くのか (酒谷 薫 著) PHP研究所

漢方医学関連書評集 > 中国漢方は難病に効く


 2002年3月発行で、本体1,400円(税別)です。

 本の題名の直ぐ下に副題として、色鮮やかな赤色で「脳神経外科医が見た『不思議な効果』」とあります。
 本書を一読すると、西洋医学的には治療不能な運動神経疾患が、中国の伝統医療(中医学)によって、あきらかな改善効果を得たことから、中国医学にのめり込んでいく脳神経外科医の興奮がよく伝わってきます。用語法に一部違和感を感じるところもありましたが、1〜2の誤植部分を除いて、基本的に懇切丁寧で、専門家でない一般の読者にも比較的理解しやすく書かれています。

 脳神経外科と神経内科は両輪の歯車のように愚娘が言っていましたので、神経内科の医師である愚娘にこの本を送ってやっていたら、読む前にどこかへなくしてしまったと言います。「親の心子知らず」の典型です。

 ともあれ、本書の帯の一部に「本書は、第一線の西洋医だからこそ書けた、実に魅力的なルポルタージュである。」とあり、裏表紙の帯には酒谷医師の中国医学との出会いについて、次のように要約しています。

「日本の援助で北京に建設された病院にて、6年半に渡って脳神経外科や神経科分野の指導を行った著者。当初、中国医学にさほど興味を持っていなかった著者が、なぜ中国医学に魅了されるようになったのか? 
 中国ならではの考え方を、中国人医師たちが絶妙なたとえで解説してくれる。それを、西洋医学を学んだ著者がさらに探求していく。まさに人と人との出会いが生みだした、おももしろくてためになる”中国医学発見記”である!」

 このように、中医学は西洋医学の脳神経外科医を感激させてのめり込ませるほどの膂力を持っており、神経内科・脳神経外科系統の疾患に対して、かなりな能力を発揮できるわけです。ただ、本書でも触れている通り、あまりに簡略化された日本漢方に、運動神経系の疾患に対して、どれほどの効果を上げ得ることか?

 本書は、一般の方にも十分理解できる内容で、やさしく懇切丁寧に書かれていますので、中国漢方の実際のイメージを捕らえるのに、うってつけのように思われます。