村田漢方中西医結合論━特殊性と共通性の合体

村田の「中医漢方薬学」論の集大成として・・・誰にもわかりやすく

 個人の特殊性を重視する中医学と漢方医学・共通性を重視する西洋医学、三者を合体した漢方薬。


 本論は、他の多くの拙論のように、過去に専門家向けに発表したものを改訂したものではありません。
 平成17年6月23日と24日にまたがって、別サイト「漢方と漢方薬の真実」において、「特殊性と共通性(中西医結合)」「再び中西医結合について」と題した日録として気楽に書いたものをまとめたものです。

 本論の理論的基礎は拙論の「漢方医学発展への道」「中医学と西洋医学」なのですが、いずれも専門家向けです。


 かなり要約して言えば、本場中国の漢方「中医学」も、日本の漢方医学においても、「その人固有の体質および疾患の個性」を重視した医学です。
 すなわち「特殊性」を最も中心にした医学ということです。
 一般社会でもよく「個性を大事にする」とか言いますが、漢方の世界では「個性を大変重視」するのです。

 一方、西洋医学においては、人間としての、人類としての「共通性」をもっとも重視します。
 極論すれば、個性などは二の次、ということです。医学の世界ですから、「西洋医学的な病名に共通する特徴」を特に重視しているわけです。
 要するに、西洋医学はこの「共通性」を重視した治療学、ということができます。

 この特殊性を把握して、その人その人の漢方処方を考えるという中医学や漢方医学の方法は、西洋医学とはまた異なった、素晴らしい威力を発揮するものなのです。

 とは言え、諸検査の方法や、病名学的な分類方法、および治療法・薬物療法において、西洋医学特有の人類に共通した部分の解明から、数多くの素晴らしい成果が得られているのも、間違いない事実です。

 個人個人の特殊性を重視する中医学(中国の伝統医学=中国漢方)や日本の漢方医学と、特定の疾患における共通性を重視する西洋医学。

 これら三者のよいところを合体したものが「中西医結合」です。

 (合体させるからと言って、なにも漢方薬と一緒に合成医薬品を併用する、と言っているのではありません。
 もちろん、すでに西洋医学治療において、お医者さんから頂いている必要不可欠な医薬品類は、それはそれとしての別問題の話です。
 ここでは、漢方の今後の新しいあるべき方向としての理想論どころか、すでに村田漢方堂薬局で実践している方法論をやさしく書いているものです。)

 もう少し単純に言えば、中国医学や漢方医学と西洋医学の結合、ということですが、西洋医学的な発想を漢方医学にも応用する、ということです。

 もう少しだけ具体的に言えば、

 もともと特殊性を把握して方剤を考える漢方のやりかたに加え、西洋医学的な共通性を考慮した漢方薬や中草薬類の配合を加える、ということなのです。
 たとえば、村田漢方堂薬局において、西洋医学的な発想から開発したものに、次のようなものがあります。

 ミネラル学の応用で、カルシウムとマグネシウムを中心にしたものに、これらに付随する微量ミネラルとともに、葉緑素系の天然原料から製造された医薬品の併用により、ある種のアレルギー性疾患などの「共通性」をカバーする。
 これに、弁証論治にもとづく「特殊性」に対応した漢方薬方剤を、必要に応じて配合する、というもの。


 長期にわたる臨床実践の繰り返しから生まれた中国の伝統医学・薬学の領域において、これらの先人の業績を「批判的に継承しなければならない」と、多くの中国の中医師らが公言されています。

 一方、現代社会、今日のこの日本国において、西洋医学・薬学という各疾患に対する共通性の把握から得た膨大な研究成果と業績をヒントにして、これを中医学や漢方医学に応用できないはずがない!

 その一つの方法が、上述した村田漢方堂薬局の方法、名付けて「中医漢方薬学療法」です。

 現代社会における疾病構造というものは、実に複雑多変であり、これらに対処するには漢方医学・薬学の分野においても、高度に複雑化されて当然のこと。

 ですから、軽医療の分野はともかく、難治性疾患はもとより、一般の慢性疾患に対処するには、漢方医学もそれなりに発展・進化の法則として、それ相応の知恵と工夫が必要である、といえます。

 とは言うものの、「例外のない規則はない」といわれるように、昨年から立て続けに、病院治療や漢方治療でも長年、治癒せずステロイド漬けになっていたような人が3名、「インチンコウ湯」の単方で急速に軽快したりするなど、

 なんでここまで苦労されたの?

 と疑問に思うほど、単純な漢方薬方剤で、急速に軽快する場合もありますが、これらはやはり例外に近いことは事実です。

 ともあれ、以上のことから、必ず西洋医学における専門医による診断および治療は、漢方薬を求める前に、必ず受けておくべきだといえます。

 西洋医学の一般治療で、どうしてもあまり回復しないとき、複数の専門病院や専門科で諸検査および標準治療を受けても、思うようにならないとき、はじめて漢方を考えても、決して遅いとはいえない。

 漢方療法を受けるにしても、必ず専門医による正しい診断があってはじめて、上述の「中西医結合」の本領をよりよく発揮できる。
 すなわち、よりすぐれた漢方薬の配合が可能だということなのです。