漢 方 と 漢 方 薬 の 虚 実 「天天素」被害の前兆を摑んでいた!

一般社会の常識とネット社会の常識の違いについて(平成17年春)

村田恭介紹介記事 >> [漢方と漢方薬の正しい意味][漢方と漢方薬


 ここで言う「虚実」とは、中医学や漢方医学の基礎理論における「虚実」の意味ではありませんので、決して誤解なきよう願います。

 駄洒落(だじゃれ)的な要素があるにせよ、ここでの「虚実」の意味は、一般の辞書で示されるとおり、

 うそとまこと。ないこととあること。真偽。(旺文社国語辞典[1982年版])
 事実と作り事(新明解 国語辞典[第三版]より)

という意味です。


 村田漢方堂薬局サイトは、漢方薬専門の研究サイトとして公開して以来、約半年を経過しました。この間に、心ある各サーチエンジンさんや、相互リンクサイトさんに、漢方と漢方薬のカテゴリの問題について、ご質問を受けることが何度かありました。

 村田漢方堂薬局サイトの管理人としましても、このネット社会における「漢方」と「漢方薬」の定義について、一般常識とはかなり異なる世界であることに愕然とすることが多々ありました。

 たとえば、次の文章は、これまでにご質問を受けた各サーチエンジンさんや相互リンクサイトさんに対する、村田漢方堂薬局サイトの管理人からのお返事メールを合体・要約したものです。


拝復
 小生が長く所属しております日本の漢方界におきましては、主として医師と薬剤師が所属する専門家集団だけに、「漢方」も「漢方薬」も、厚生労働省認可の医薬品が主体であることが、当然の前提でありましたが、どうもネット界では、その常識が通用しない部分があるようでして、明らかな牽強付会により、【漢方】といえば、「中国から輸入されたもの」という意味合いばかりが強いらしく、薬草とは無縁の健康食品でさえ、すべてが「漢方」と、表現されるやに見えます。

 具体的には次のような例があります。

 http://m-kanpo.ftw.jp/u33192.html#416(後日判明したのは、この漢方と称されて売られていた×××は、未承認医薬品としても問題となり、被害者も続出した肥満改善を目的とした「天天素」である。被害が公表される以前に摑んでいた内容のため、特定製品の非難となるのを恐れ、当時は×××と表現せざるを得なかったのである。参考文献:厚生労働省発表記事

 もっと極端な場合では、【漢方薬】のように、たとえ【薬】という言葉が加わってさえも、同様の宣伝文句に使用されている事実があるようです。

 これらのことから、平成17年の2月に、某サーチエンジンの管理人さんから次のようなメールを頂きました。
 
「・・・漢方というと免疫力をアップさせて回復させる良いイメージがありましたが、例のダイエット事件やネット上の明らかな薬事法違反。このようなサイトはサーチエンジンにとっても迷惑です。知識の有るみなさんにおかしな掲載にならぬよう、ご指導頂けると幸いです。今後ともよろしくお願い致します。」

 ダイエット事件は合成化学薬品含有の問題で、漢方薬は全くの濡れ衣ではありましたが。

 ともあれ、医師と薬剤師・薬種商しか取り扱えない、真の意味の「漢方薬」を【漢方薬(医薬品)】として厳密なカテゴリを設定される貴方様のご意見には、当方も全面的に同感であります。

 再度、繰り返すことになりますが、本来、【漢方】という用語は、専門家集団から見れば当然、医師・薬剤師などの有資格者しか取り扱えない医薬品としての漢方をイメージするのですが、ネット社会においては、貴方様がご疑問を投げかけられるように、牽強付会としか思えない解釈から、当然のごとく一般の健康食品やサプリメトさえ、多くが「漢方」や「漢方薬」に分類されているようです。

 このような一般常識とはいささか異なるネット社会の現実について、敏感に疑問を呈される心あるサイト様がおられることに、大変心強く感じた次第です。
                                         頓首



 ちなみに、岩波書店発行の『広辞苑(第三版)』には、次のように定義されています。

 漢方 = 中国から伝来した医術。
 漢方薬= 漢方で用いる薬。おもに草根・木皮の類


 これが多くを物語っているのではないでしょうか。



 さらに、村田漢方堂薬局サイトのトップページにも、少し前まで記載していたことがあるのですが、重要なことですので、ここでも次のことを強調しておきたいと思います。

 つまり、漢方薬は厚生労働省が認可したれっきとした医薬品です。直接対面による綿密周到なご相談にもとづいて販売すべきものであり、最初から安易に通信販売は行うべきでないと愚考します。

 体質に合致した漢方薬が見つかって以後、遠方であるなど、その後の利便性を考慮した上での通信販売とは、次元と意味がまったく異なると思います。

 厚生労働省からも常々「医薬品の濫用助長」防止の観点から、様々なご指導があることは周知の通りであります。

 たとえば、村田漢方堂薬局のヒゲ薬剤師が開発指導した漢方薬(医薬品)の「生薬製剤二号方」など、ネット上だけで、はたして正しい服薬指導がきちんと出来るものかどうか、開発指導者自身が危惧しているのですから、多少は説得力があるのではないでしょうか?


 ところで、漢方薬の医薬品関連の問題において、まったく問題がないわけではありません。
 日本では医薬品として認められていなくとも、本場中国では【中草薬】として、れっきとした医薬品扱いの漢方薬の製剤原料があります。
 たとえば、「板藍根」や「白花蛇舌草」など、たくさんあります。
 これらが日本国内では、いわゆる健康食品扱いされてしまうという、大きな問題を抱えています。

 このへんの矛盾は、村田漢方堂薬局でも常に悩ましい問題として困惑しております。


追記:5月19日、某漢方専門メーカーより、漢方薬類のインターネット販売の自粛を強く促すFAXが送られてきました。
 心あるメーカーさんも、村田漢方堂薬局のヒゲ薬剤師と同様な不安を抱いておられるわけです。


               (平成17年の春)