副題に「外科医自ら実践した妻へのガン告知と末期医療」とあります。
2004年5月に発行された文庫本ですが、オリジナルは1999年2月にマガジンハウスより単行本で刊行されたものに、加筆・修正を施したものが、本書です。
私自身はオリジナルを当時すでに読んでいるのに、さらに今年、文庫本が出版された時、直ぐに買って読んだのは、お子さんたちのその後の元気な姿を確かめたかったからです。
「愛する妻を、いかにして安らかな死に導くか。幼い子どもたちとの静かな別れは、可能か。不治の病に冒された妻と家族の一年を描いた、ある外科医の勇気と戦いの記録。」
とあるのが、単行本の表紙の帯です。裏表紙のおびには「40歳を過ぎたばかりの妻が『スキルス胃癌』に冒された時、………」とあります。
これらを読むだけでも本文を読む前から涙を誘われます。患者の父は医者、患者の妹も医者です。
西洋医学では救いようがないと知ると、様々な代替療法を見つけては娘に勧めます。養子免疫療法、つまり活性リンパ球療法、アガリクスや霊芝など、お医者さんたちは他人様の場合には、かなり否定的に考えているはずの代替療法を、ひとたび自分や自分の家族が不治の病に襲われたとき、見栄も外聞もなく、これらに飛びつくのは、西洋医学専門の医師であっても例外ではないようです。
日頃、あれだけ代替療法に批判的であった先生方が、かくも極端な宗旨宗旨替えをされてしまうのは、人情として止むを得ないことかもしれません。
しかしながら、患者の夫である外科医の熊沢氏は、それら代替療法に対して常に否定的です。
そのことで医師でもある義父や義妹、さらに義母とも、とても険悪な状態にまで発展したこともあります。
これら代替療法の問題も含め、患者に対する告知の問題、幼い子供らの問題、いかに患者を看取るかの問題など、様々に考えさせられる内容です。
生死事大、無常迅速です。